水銀・・・身近にある危険な金属！安全な処理方法とは？(薬剤師監修)
水銀という金属は身近にある馴染み深く、とても不思議で危険な金属です。
水銀は一昔前まで私達の生活に必要なものでした。
しかし、その反面、とても危険なものでもありました。
そんな水銀について述べていきたいと思います。
不思議な金属、水銀
水銀は金属です。 金属は通常、定温状態で固形です。
しかしながら水銀は定常状態で液体なのです。
原子番号の順列で上下左右に隣接する元素は似た性質を持ちますが 水銀に隣接する金、タリウム、カドミウム、コペルニシウムは液体でなく、個体で存在します。
全原子の中で水銀だけ液体なのです。
水銀は液体で熱伝導性がよく、液体である為、加工しやすいなどの利便性もあります。
他の金属との組み合わせにより化学反応性が向上したり、殺菌性が増したりするなどの理由により様々な用途で用いられてきました。
体温計、蛍光灯、血圧計、消毒薬、殺菌薬、絵の具、漢方、電池、鏡など ほんの一昔前まで水銀や水銀の化合物は使われてきました。
そのような経緯があり、近年では水銀を用いない手法がとられるようになりました。
水銀の毒性、人体への影響
他の物質と関わり合いがない純粋な水銀は毒性があまり高くありません。
ある程度の量が体内に蓄積されないと毒性を発揮しないからです。
しかし、水銀の化合物、有機水銀は水銀よりもはるかに強い毒性を発揮してしまいます。
水銀の毒性は主に2種類あります。
・体内に蓄積されて毒性を発揮する
・少量でも致死する
水銀の毒性で恐ろしいのが体内に蓄積されて毒性を発揮する事です。
成人の大人が水銀を体内に蓄積しても毒性が現れない量でも小児や胎児にとってはその量が毒になります。
特に妊娠中の母親が水銀に汚染された食物を摂取すると胎児へその水銀が行き渡ってしまいます。
胎盤は水銀のような体内に不要な物質を通過しやすくしている為です。
その結果、生まれてくる赤ちゃんは水銀中毒の症状が出てしまいます。
水銀は神経系、体内の様々な臓器に障害を与えます。
水銀中毒になった赤ちゃんは重度の障害を持って生まれてきてしまいます。
水俣病と呼ばれた公害病の多くは水銀中毒によって引き起こされてきました。
水銀が工場排水などに含まれて自然界に放出されると、まず、プランクトンなどへ水銀が蓄積されます。
魚や貝などがその汚染されたプランクトン食べ、更に水銀が蓄積されていきます。
その魚や貝などを人が食べる事で体内に水銀が摂取されていきます。
そして、蓄積された水銀が水銀中毒を引き起こしていきます。
この蓄積していく過程を生物濃縮といいます。
自然界、特に海洋系の生物は微量ながら水銀などの危険な物質を溜め込んでいます。
しかし、その量が微量な為、人体に影響は出にくのです。
環境汚染レベルの大量でないと影響は出ません。
この生物濃縮の過程をはある意味、自然界からの人への復讐のようなものなのかもしれません。
身の回りにある水銀製品の処理はどうすればいい？
水銀は近年では毒性が強い為、生活用品にはあまり用いられることがなくなりつつあります。
しかしながら、家庭には昔の生活用品が出てきて水銀が含まれていることがあるかと思います。
絶対してはいけないことは不法投棄はもちろん、可燃ゴミや不燃ゴミに混ぜて破棄することです。
特に可燃ゴミに混ぜるのは危険です。
ゴミ焼却場で処理される可燃ゴミに水銀が入っていると加熱される中で水銀が気化し大気中に放出されてしまいます。
水銀の大気汚染が起こります。
この気化した水銀も毒性があり、また人体に蓄積していきます。
ゴミ焼却場にはこの気化した水銀の検査メーターがある焼却場もあり、一定の量を計測すると、焼却施設の稼働が止まります。
1日に何度も焼却場の稼働が止まってしまうこともあるそうです。
水銀の処理は市町村ごとの自治体で異なるので必ず、確認を取るようにしてください。
また万が一、水銀製品が落下や故障で水銀がこぼれてしまった場合についてです。
まず、窓を開けたり、部屋の換気をして下さい。
水銀は気化していく為です。
処理をする前に身の回りの金属は外すようにして下さい。
水銀は金属と触れるとその金属を溶かします。
アクセサリーなどが身についたままだと溶けて危険なケースがあります。
こぼれた水銀はティッシュや新聞紙などですくい取りポリ袋に入れてください。
肌に触れないように、また水銀を入れる容器は紙や金属製の容器は避けて下さい。
ポリ袋は2重以上にして下さい。
そして、有害ゴミなど自治体の処分方法に従って下さい。
水銀の取り扱いには十分気をつけて下さい。
まとめ
今の生活を送れているのには水銀があった為に生活の質が上がったともいえます。
水銀が無かったらよりよい蛍光灯も体温計も電池も無かったかもしれません。
世界の水銀の取り扱いに関する条約で「水俣条約」という条約があります。
国境を超えた水銀の被害、水銀の取り扱いに関する国際ルールです。
この「水俣」というのは水銀で起きた公害、水俣病からとられたものです。
水銀の公害ということで水俣病の水俣は世界共通語になってしまったのです。
その惨劇を繰り返してはならない、そんな意味合いもあると思います。
身近に水銀があるかもしれません。
くれぐれも取り扱いには気をつけてください。
